個人サロンを開業されたオーナー様、本当におめでとうございます。
お客様に最高のサービスを提供することに集中したいのに、帳簿や経理といった慣れない作業に頭を悩ませていませんか。「帳簿の付け方が全くわからない」「パソコンは苦手だから手書きで簡単に済ませたい」と感じている初心者の方は、決して少なくありません。
ご安心ください、個人サロンの帳簿は、必ずしも難しい会計ソフトを導入しなくても、手書きで驚くほど簡単につけることができます。
この記事では、経理の専門用語を一切使わず、誰でも今日から始められる手書きでの帳簿の付け方を、具体的なステップと豊富な事例でご紹介します。
読み終える頃には、帳簿付けへの漠然とした不安が解消され、自信を持ってサロン運営に取り組めるようになっているでしょう。
結論として個人サロンの帳簿は手書きで誰でも簡単に始められます
まず最初に結論からお伝えします。
パソコンが苦手な初心者の方でも、個人サロンの帳簿は大学ノートとペンさえあれば、今日から手書きで簡単に作成することが可能です。
難しく考えすぎる必要は全くありません。
ここでは、なぜ手書きで十分なのか、そしてどのような方法で始めるのかという、最も重要なポイントから解説していきます。
初心者向けには売上と経費だけを記録する簡単な付け方で十分です
個人サロンのオーナー様が最初に取り組むべき帳簿付けは、会計士が使うような専門的な「複式簿記」である必要は全くありません。
特に、確定申告で「白色申告」を考えている方であれば、「単式簿記」と呼ばれる非常にシンプルな方法で十分です。
これはまさしく、お小遣い帳をつける感覚に近く、日々の「売上(収入)」と「経費(支出)」を順番に記録していくだけの簡単な作業です。
具体的には、「いつ、誰から、いくら売上があったのか」、そして「いつ、何に、いくら支払ったのか」をノートに書き留めていくだけで、それは税務署に提出できる立派な帳簿になります。
このシンプルな付け方から始めることで、挫折することなく帳簿付けを習慣化できるのです。
手書きの帳簿付けは確定申告で正式に認められている方法です
「本当に手書きのノートなんかで大丈夫なの?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、ご安心ください。
所得税法においても、税務署に提出する確定申告の根拠資料として、手書きの帳簿は正式に認められています。
税務署が重視するのは、高価な会計ソフトを使うことではなく、日々の取引を正確に、そして正直に記録し続けることです。
手書きであっても、日付、金額、取引内容が明確に記載されていれば、それは信頼性の高い証拠資料として扱われます。
大切なのは、形式よりも中身の正確性なのです。まずは身近なノートとペンで、安心して始めてみましょう。
会計ソフトへの移行はサロンの規模が大きくなってからで問題ありません
もちろん、将来的にお客様が増えて取引が複雑になったり、より大きな節税効果のある青色申告(65万円控除)を目指したくなったりした際には、会計ソフトの導入を検討すると良いでしょう。
例えば、「やよいの青色申告 オンライン」や「freee会計」といったクラウド会計ソフトは、簿記の知識がなくてもガイドに従って入力するだけで複雑な帳簿を作成できるため非常に便利です。
しかし、開業したばかりの段階で無理に導入する必要は全くありません。
まずは手書きで帳簿付けの基礎的な感覚を掴み、ビジネスの成長に合わせてステップアップしていくのが、最も現実的で簡単な進め方です。
個人サロンの帳簿を手書きで始めるために最初に準備するべきもの
手書きで帳簿をつけようと決めたら、早速準備を始めましょう。
特別なものを買い揃える必要はなく、ほとんどが文房具店や100円ショップで手に入る身近なものばかりです。
ここでは、帳簿付けをスムーズに開始し、継続していくために最低限用意しておきたいアイテムを具体的にご紹介します。
手書き帳簿の三種の神器
- ノート:記録の土台となる、少し大きめの大学ノート。
- ペン類:黒ボールペンと、色分け用の赤・青ペン。
- 保管用品:レシートや領収書を入れるためのファイルや箱。
帳簿の付け方で最も重要な土台となるノートを一冊用意しましょう
まず何よりも必要なのが、1年間の記録をすべて書き込むためのノートです。
市販の専用会計帳簿も便利ですが、最初は罫線が入っているだけのシンプルな大学ノートで全く問題ありません。
例えば、コクヨの「Campusノート」や無印良品の「植林木ペーパー裏うつりしにくいノート」など、ご自身が「これなら書きやすい」と感じるものを選びましょう。
サイズはB5やA4など、書き込みやすい少し大きめのものがおすすめです。
1年間の記録を1冊にまとめることを想定して、ページ数に余裕のあるものを選ぶと後でノートを買い足す手間が省けます。
日々の記録に使うボールペンと色分け用のカラーペンを準備します
ノートとセットで、あなたの気分が上がるような、書き心地の良いボールペンを準備しましょう。
帳簿は長期間保管し、後から見返すことが多いため、摩擦で消えるタイプのボールペンではなく、黒の油性またはゲルインクのボールペンが最適です。
さらに、赤や青のカラーペンを1〜2本用意しておくと、帳簿が格段に見やすくなります。
例えば、「売上は黒」「経費は赤」「プライベートとの按分費用は青」といったように色分けして記入することで、一目で収支の状況が分かりやすくなります。
このように視覚的に分かりやすくする工夫が、手書き帳簿を簡単にするコツの一つです。
レシートや領収書を保管するためのファイルや箱も忘れずに
帳簿に記入した経費の証拠として、レシートや領収書は非常に重要です。
これらは確定申告の際に、経費の正当性を証明するために必要なものであり、法律で7年間の保管が義務付けられています。
受け取ったレシートをなくさないように、専用の保管場所を作りましょう。
月ごとに分けられるドキュメントファイルや、お菓子の空き箱、月別の封筒など、管理しやすいものであれば何でも構いません。
ダイソーやセリアで販売されている月別インデックス付きのファイルケースは、整理しやすく特におすすめです。
レシートを受け取ったら、お財布に入れっぱなしにせず、すぐにその保管場所へ移す癖をつけましょう。
初心者向けに解説する個人サロンの簡単な手書き帳簿の基本構成
ノートとペンを準備したら、いよいよ帳簿のフォーマットを作っていきます。
ここでは、誰でも真似できる、お小遣い帳のような非常にシンプルな帳簿の構成をご紹介します。
この基本形さえ押さえれば、あとは日々の取引を書き写していくだけです。
難しく考えず、まずはこの形をあなたのノートに書き写してみてください。
ノートの左ページを売上を記録するための専用ページにします
用意したノートを見開きで使い、左側のページを「売上(収入)の記録ページ」としましょう。
ページの最上部に「売上」と大きく書いておきます。
そして、左から順に「日付」「内容」「金額」という3つの項目を作ります。
線を引いて表のようにすると見やすいですが、最初は項目名を書くだけでも全く問題ありません。
このページには、お客様からいただいた施術料金や、店内で販売した商品の代金など、サロンに入ってきたお金に関する情報をすべて記録していきます。
ノートの右ページを経費を記録するための専用ページにします
次に、見開きの右側のページを「経費(支出)の記録ページ」とします。
ページの最上部に「経費」と大きく書きましょう。
こちらも左ページと同様に、左から「日付」「内容」「支払先」「金額」という4つの項目を作ります。
売上と違い「支払先」の項目を加えるのがポイントです。
後で見返したときに「この3,000円、どこで何に使ったんだっけ?」と思い出しやすくなり、非常に便利です。
このページには、サロン運営のために支払った家賃、材料の仕入れ代金、広告費など、サロンから出ていったお金に関する情報を記録していきます。
各ページの最後にその月の合計金額を計算する欄を設けます
売上ページと経費ページのそれぞれの最後に、「月合計」という欄を設けておきましょう。
月末になったら、その月に記録した売上の合計金額と、経費の合計金額をそれぞれ電卓で計算して記入します。
例えば、1月の売上合計が500,000円、経費合計が200,000円だった場合、それを記入します。
これにより、毎月のサロンの利益(売上 500,000円 – 経費 200,000円 = 利益 300,000円)が一目でわかるようになり、経営状況の把握に役立ちます。
この月ごとの集計作業が、確定申告の準備を格段に楽にしてくれるのです。
具体的な事例で学ぶ個人サロンの売上手書き帳簿の付け方
それでは、実際に売上が発生した際の帳簿の付け方を、個人サロンでよくある具体的な事例をもとに解説します。
最初は戸惑うかもしれませんが、ルールは「いつ、何を、いくらで売り上げたか」を記録するだけ、と非常にシンプルです。
以下の例を参考にして、ご自身のノートに書き写す練習をしてみてください。
日付 | 内容 | 金額 |
---|---|---|
4/5 | 施術料(カット・カラー) 鈴木様 | 15,000 |
4/6 | 店販(トリートメント) | 3,000 |
4/7 | 本日売上合計 | 30,000 |
お客様からの施術料金の売上の簡単な記入例を紹介します
例えば、4月5日にお客様からカットとカラーの施術料金として、現金で15,000円を受け取ったとします。
この場合、ノートの左側(売上ページ)に次のように記入します。
「日付」の欄に「4/5」、「内容」の欄に「施術料(カット・カラー)」、「金額」の欄に「15,000」と書きます。
もしお客様のお名前をメモしておきたい場合は、「内容」の欄に「施術料(鈴木様)」のように加えておくと、後でカルテと照合する際に便利です。
このように、一件一件の売上を発生した日付順に記録していくのが基本です。
シャンプーやトリートメントなどの店販商品の売上の付け方
個人サロンでは、施術だけでなくシャンプーやワックスといった商品を販売する「店販(てんぱん)」も重要な収入源です。
例えば、4月6日にお客様がトリートメントを現金で3,000円購入されたとします。
この場合も施術料と同様に、売上ページに「日付」に「4/6」、「内容」に「店販(トリートメント)」、「金額」に「3,000」と記録します。
施術料と物販の売上を「内容」の欄で明確に書き分けることがポイントです。
こうすることで、「施術と物販、どちらの売上が多いのか」を分析できるようになります。
複数の売上があった日の合計金額をまとめて記入する方法
もし一日に複数のお客様が来店され、一件ずつ記入するのが面倒な場合は、一日の終わりに合計額を記入する方法でも問題ありません。
例えば、4月7日に3人のお客様が来店し、売上がそれぞれ10,000円、8,000円、12,000円だったとします。
この場合、レジの締め作業などで計算した一日の合計売上30,000円を、売上ページに「日付:4/7」「内容:本日売上合計」「金額:30,000」とまとめて記入することができます。
ただし、この方法を選ぶ場合でも、個々の売上がわかるような日計表やレジのレシート、メモなどを別途必ず残しておきましょう。
これは、後で売上の詳細を確認したり、税務調査などで質問されたりした際に、スムーズに説明するための重要な資料となります。
豊富な事例で理解する個人サロンの経費手書き帳簿の付け方
次に、経費の付け方です。
経費とは、サロンを運営するために必要だった支出のことで、これを漏れなく記録することが、最終的に支払う税金を抑える「節税」に直結します。
ここでは、個人サロン特有の経費について、具体的な事例を豊富に挙げながら、手書きでの簡単な記入方法を解説します。
お手元にあるレシートや領収書を見ながら一緒に確認していきましょう。
日付 | 内容 | 支払先 | 金額 |
---|---|---|---|
4/10 | 仕入(カラー剤) | ビューティーガレージ | 50,000 |
4/12 | 消耗品(洗剤・ペーパータオル) | マツモトキヨシ | 3,000 |
4/20 | 広告宣伝費(チラシ印刷) | プリントパック | 30,000 |
4/25 | 店舗家賃(4月分) | ABC不動産 | 100,000 |
家賃や水道光熱費といった固定費の簡単な帳簿記入方法
サロンのテナント家賃や水道光熱費、通信費などは、毎月決まって発生する代表的な経費(固定費)です。
例えば、4月25日に銀行口座からテナント家賃10万円が引き落とされた場合、ノートの右側(経費ページ)に次のように記入します。
「日付」に引き落とされた「4/25」、「内容」に「店舗家賃(4月分)」、「支払先」に「ABC不動産」、「金額」に「100,000」と書きます。
水道光熱費やインターネット料金なども同様に、支払いが発生した日付(引き落とし日や支払日)で記録していきましょう。
通帳のコピーも支払いの証拠になるので、レシートがない引き落としの場合は該当箇所をマークしておくと良いでしょう。
シャンプーや薬剤などの仕入れに関する費用の付け方
施術に使うシャンプー、カラー剤、パーマ液などの材料費も、もちろん重要な経費です。
例えば、4月10日にディーラーである「ビューティーガレージ」からカラー剤をクレジットカードで50,000円分仕入れたとします。
この場合、経費ページに「日付」は実際に購入した「4/10」、「内容」は「仕入(カラー剤)」、「支払先」は「ビューティーガレージ」、「金額」は「50,000」と記入します。
支払いがクレジットカードでも、経費として計上するのはカードの引き落とし日ではなく、商品を購入した日付であるという点がポイントです。
クレジットカードの利用明細も、領収書と同様に大切な証拠書類なので、必ず保管しておきましょう。
タオルや雑誌などの消耗品費に関する具体的な記入事例
お客様用のタオルやスリッパ、待合室に置く雑誌、掃除用品、文房具など、サロン運営に必要な備品類は「消耗品費」として経費になります。
一般的に、使用可能期間が1年未満か、取得価額が10万円未満のものがこれに該当します。
例えば、4月12日にドラッグストア「マツモトキヨシ」で業務用洗剤とペーパータオルを現金で3,000円分購入したとします。
この場合は、経費ページに「日付:4/12」「内容:消耗品(洗剤・ペーパータオル)」「支払先:マツモトキヨシ」「金額:3,000」と記入します。
どんなに細かい買い物でもレシートは必ず保管し、忘れずに帳簿に記録することが節税の第一歩です。
チラシ作成やウェブ広告など広告宣伝費の帳簿への付け方
新規顧客を獲得するためのチラシ印刷代や、ホットペッパービューティーのようなポータルサイトへの掲載料、SNS広告の費用などは「広告宣伝費」として経費計上できます。
例えば、4月20日に印刷会社の「プリントパック」にチラシのデザインと印刷を依頼し、銀行振込で30,000円支払った場合は、「日付:4/20」「内容:広告宣伝費(チラシ印刷)」「支払先:プリントパック」「金額:30,000」と記録します。
サロンの存在を知ってもらうための集客にかかった費用も、漏れなく経費として帳簿につけましょう。
お店のホームページ作成費用や、看板の製作費なども広告宣伝費に含まれます。
個人サロンの初心者が特に迷う自宅兼サロンの経費の付け方
自宅の一部をサロンとして使用している個人サロンオーナー様にとって、最大の疑問点が「家事按分(かじあんぶん)」ではないでしょうか。
これは、生活費(家事費)と事業費が混在している支出について、事業で使った割合分だけを経費として計上する、という考え方です。
ここでは、その具体的な計算方法と帳簿への簡単な付け方を解説します。
自宅サロンの家賃を経費にするための家事按分という考え方
もし賃貸マンションの一室でサロンを運営している場合、家賃の一部を経費にできます。
按分の基準は「事業で使っているスペースの割合(面積比)」で計算するのが最も一般的で、税務署への説明もしやすいです。
例えば、家全体の面積が60平方メートルで、そのうちサロンとして使っている部屋が15平方メートルだとします。
この場合、事業使用割合は 15㎡ ÷ 60㎡ = 0.25、つまり25%となります。
月の家賃が12万円であれば、120,000円 × 25% = 30,000円を、毎月「地代家賃」として経費計上することができます。
帳簿には「内容:家賃(25%按分)」のように按分した根拠をメモしておくと分かりやすいです。
電気代やガス代など水道光熱費の簡単な按分割合の決め方
水道光熱費も家事按分が可能です。
こちらは面積比よりも「事業での使用時間」や「コンセントの数」などを基準にすると説明しやすくなります。
例えば、サロンの営業実態から考えて、家全体の電気使用量のうち30%を事業用と合理的に決めたとします。
電気代の請求が月に15,000円だった場合、15,000円 × 30% = 4,500円を「水道光熱費」として経費にできます。
この割合は、税務署に質問された際に合理的に説明できる根拠(例:週5日、1日8時間営業なので、稼働時間で30%と設定、など)を自分で決めておくことが非常に重要です。
インターネット料金や携帯電話代など通信費の帳簿の付け方
サロンの予約受付や情報発信に使うインターネット回線やスマートフォンの通信費も、もちろん家事按分の対象となります。
これも使用実態に応じて割合を決めます。
例えば、スマートフォンの利用のうち、半分がお客様との連絡やSNS更新などの事業目的、もう半分がプライベートだと客観的に判断できる場合、使用割合を50%と設定します。
月の携帯料金が10,000円であれば、5,000円を「通信費」として経費にできます。
帳簿には「内容:携帯電話料金(50%按分)」などと、家賃と同様に按分の根拠を記録しましょう。
個人サロンの帳簿付けを無理なく続けるための簡単なコツ
帳簿付けは一度やれば終わりではなく、継続することが何よりも大切です。
しかし、日々のサロンワークで忙しいと、ついつい後回しになりがちですよね。
ここでは、三日坊主にならずに帳簿付けを習慣化するための、誰でも実践できる簡単なコツをご紹介します。
帳簿付けを続ける3つの秘訣
- タイミングを決める:「毎週日曜の夜」など、帳簿タイムをスケジュール化する。
- すぐ保管する:レシートをもらったら、専用の保管箱にすぐ入れる癖をつける。
- 迷ったら記録する:経費か悩む支出も、とりあえずメモ付きで記録しておく。
毎日ではなく一週間に一度など帳簿をつけるタイミングを決める
「毎日必ず帳簿をつけなければ」と意気込むと、かえってプレッシャーになり挫折の原因になります。
そこでおすすめなのが、帳簿付けのタイミングをあらかじめ決めてしまうことです。
例えば、「毎週日曜日の夜」や「サロンの定休日の午前中」など、あなたのライフスタイルに合わせて時間を確保しましょう。
一週間分のレシートをまとめて処理することで、効率的に作業を進めることができます。
大切なのは完璧を目指すことではなく、決まったペースで継続することです。
レシートや領収書をもらったらすぐに専用の場所に保管する
経費の記録漏れを防ぐ最も効果的な方法は、レシートや領収書を受け取ったら、その場ですぐに専用の保管場所に入れる習慣をつけることです。
お財布の中に入れっぱなしにしていると、他のレシートと混ざったり、印字が薄くなったり、紛失の原因になったりします。
バッグの中に小さなクリアファイルや封筒を一つ入れておき、「サロン経費専用」として、もらったレシートはすぐにそこへ移動させましょう。
このたった一手間が、後々の帳簿付けを格段に楽にします。
経費になるか迷った支出もとりあえず記録しておくのがポイント
サロン運営に関わる支出の中で、「これは経費になるのかな?」と判断に迷うものが出てくることがあります。
例えば、スキルアップのためのセミナー参加費や、同業者との情報交換のためのカフェ代などです。
そんな時は、迷わず一旦帳簿の経費ページに記録しておきましょう。
その際、「内容」の欄に具体的な目的(例:〇〇カットセミナー参加費、△△さんと情報交換会)を詳しくメモしておくのがコツです。
最終的に経費になるかどうかは確定申告の際に税務署や専門家に確認すれば良いので、まずは記録漏れを防ぐことを最優先に考えましょう。
知っておきたい手書き帳簿のメリットとデメリットについて
手書きでの帳簿付けは初心者にとって非常に有効な方法ですが、もちろん万能ではありません。
メリットとデメリットの両方を正しく理解することで、ご自身の状況に本当に合っているのかを判断できます。
ここでは、客観的な視点から手書き帳簿の良い点と注意点を整理します。
手書き帳簿の最大のメリットは初期費用がかからずすぐに始められる点です
手書き帳簿の最大の魅力は、その手軽さと圧倒的なコストの低さです。
会計ソフトのように月額利用料や年間ライセンス料がかかることはなく、ノートとペンさえあれば初期費用は数百円で済みます。
パソコンがなくても、インターネット環境がなくても、思い立ったその日からすぐに始めることができます。
また、自分の手で数字を書き写すことで、サロンの売上や経費の流れが直感的に頭に入りやすく、自然と経営感覚を養うトレーニングにもなります。
手書きのデメリットは計算ミスや集計に時間がかかる可能性があることです
一方で、手書き帳簿にはデメリットも存在します。
最も注意すべきは、手作業による計算ミスが起こりやすい点です。
電卓で集計する際に数字を打ち間違えたり、ノートに書き写す際に転記ミスをしたりする可能性があります。
また、取引が増えてくると、月末の集計や確定申告時の年間の合計額の算出に多くの時間と手間がかかります。
手書き作業が負担に感じ始めたら、次のステップを考える良いタイミングかもしれません。
将来の青色申告を考えるなら会計ソフトの導入も視野に入れる
もし将来的に、最大65万円の特別控除が受けられるなど節税メリットの大きい「青色申告」に挑戦したいと考えているなら、会計ソフトの利用がほぼ必須となります。
青色申告で求められる「複式簿記」は、手書きで作成するには専門知識と多大な労力が必要だからです。
前述した「やよいの青色申告 オンライン」や「freee会計」などのクラウド会計ソフトは、日々の取引を入力するだけで自動的に複式簿記の帳簿を作成してくれます。
手書きで経営の基礎を学んだ後、事業拡大や節税対策を本格化するタイミングで、これらのサービスの導入を検討するのがおすすめです。
個人サロンの帳簿の付け方で初心者が抱きがちなその他の疑問
ここまで手書き帳簿の具体的な付け方を解説してきましたが、それでもまだ細かい疑問が残っているかもしれません。
ここでは、多くの初心者オーナー様が抱くであろう、よくある質問とその答えをQ&A形式でまとめました。
帳簿付けを始める前の最後の不安をここで解消しましょう。
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帳簿の付け方で間違えてしまった場合の簡単な訂正方法はありますか?
手書きで帳簿をつけていると、金額や内容を書き間違えてしまうことは誰にでもあります。
そんな時は、修正液や修正テープで消すのはNGです。
正式な訂正方法は、間違えた箇所に定規で二重線を引き、その上か近くの余白に正しい内容を記入することです。
誰が見ても、いつ、どこを、どのように訂正したのかが分かるようにしておくことが大切です。
もし可能であれば、二重線の上に訂正印(シャチハタ以外の認印)を押しておくと、より丁寧な訂正となります。
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個人サロンの帳簿はいつからいつまでの期間でつければ良いですか?
個人の確定申告は、毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得(儲け)を計算し、翌年の原則2月16日から3月15日までの間に申告・納税します。
したがって、帳簿もこの暦年に合わせて、1月1日からスタートし、12月31日で締めるのが基本です。
もし年の途中、例えば7月15日に開業した場合は、開業日である7月15日から12月31日までの期間の帳簿を作成することになります。
そして、翌年からは1月1日から12月31日までの一年間の記録をつけていきます。
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お客様に渡す領収書の書き方で注意すべき点はありますか?
お客様から施術料の領収書を求められた際に、正しい書き方を知っておくことも大切です。
領収書には「①日付」「②宛名(お客様のお名前、上様も可)」「③金額(改ざん防止のため¥マークや漢数字を使いましょう)」「④但し書き(例:施術代として)」「⑤発行者(あなたのサロン名、住所、氏名)」を必ず記載しましょう。
金額が税抜5万円以上の場合は、収入印紙を貼る必要がありますので注意してください。
発行した領収書の控えは、売上の証拠として帳簿と一緒に保管しておくことを忘れないようにしましょう。
市販の複写式の領収書綴りを使うと、控えが自動的に残るので非常に便利です。
まとめ
この記事では、個人サロンを始めたばかりの初心者の方に向けて、専門用語を使わずに手書きで簡単に帳簿をつける方法を、具体的なステップと豊富な事例で解説しました。
もう「どうすればいいの?」と帳簿の付け方に悩む必要はありません。
個人サロンの帳簿は手書きで簡単に始められることを理解しましょう
まず、個人サロンの帳簿は、必ずしも難しい会計ソフトは必要なく、手書きで十分に対応できるということをご理解いただけたと思います。
売上と経費をノートに記録するというシンプルな作業から始めることで、無理なく経営の第一歩を踏み出すことができます。
大切なのは、完璧を目指すのではなく、日々の取引を正直に記録し続けることです。
この地道な習慣が、あなたのサロン経営の vững固な土台となります。
この記事で紹介した簡単な付け方を参考に今日から始めてみましょう
帳簿付けは、後でまとめてやろうとすると、思い出すのも記録するのも非常に大変な作業になってしまいます。
ぜひ、この記事でご紹介した「ノートを見開きで使う方法」や「売上と経費の具体的な記入例」を参考にして、今日から、今すぐ始めてみてください。
まずはノートとペンを用意し、お財布に入っている直近のレシート一枚を記録することからで構いません。
その小さな一歩が、来年の確定申告の際の大きな助けとなり、あなた自身の経営への自信に繋がっていきます。
手書きの帳簿付けでサロンの経営状況を把握する習慣をつけましょう
手書きで帳簿をつけ続けることは、単なる税金計算のための作業ではありません。
毎月の売上と経費、そして利益を自分の目で確認することで、「今月は広告費を使いすぎたかな」「この新メニューの売上が伸びているな」といった、サロンの経営状態を肌感覚で把握できるようになります。
この数字に基づいた感覚こそが、次の的確な経営戦略を立てる上で非常に重要になります。
ぜひ、帳簿付けを通じて、ご自身のサロンをより深く理解し、さらなる発展へと繋げてください。
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